「転スラ」の10年がわかる10周年記念書籍「転スラX」刊行!
原作・伏瀬先生が「転スラ」ワールドのキャラを語る!
転生したらスライムだった件 10th ANNIVERSARY BOOK 転スラX 特集
転生したらスライムだった件10th ANNIVERSARY
BOOK 転スラX
●原作・伏瀬先生×担当編集が、ノベル1巻~21巻まで語りつくした対談インタビュー
●天魔大戦主要キャラ完全解説
●コミカライズ、アニメから舞台まで~「転スラ」ワールドの広がりをすべて紹介
●みっつばー先生、川上泰樹先生をはじめ、イラストレーター・マンガ家各氏による、貴重な描き下ろしイラスト
●伏瀬先生による書き下ろしSS「ミザリーの同僚評価」などを収録。
2024年、TVアニメ3期の放送を控える「転スラ」を隅々まで楽しむために、必読の1冊です。
期間限定!12月14日(木)23:59まで!
10周年記念書籍「転スラX」の対談記事でも語られている、原作・伏瀬先生から「転スラ」ワールドのキャラクターたちへの深い思い入れや愛情。「このキャラはどう生まれたの?」「あのキャラに実はこんな一面が!?」などなど、伏瀬先生が「語りたい!」と指名してくれた10(+α)のキャラクターを深掘り! 読めば「転スラ」ワールドや10周年本「転スラX」をさら楽しめる、貴重なインタビューをお届けします!
テキスト=加東岳史
ミョルマイルがいなかったら、けっこう危ない国になっている気がする
ベニマル
――ベニマルは物語の初期からのキャラクターですが、特定のモチーフとして参考にしたキャラや人物はいるんでしょうか?
伏瀬特にこのキャラ、というのは意識したことはないですね。ただ、TRPGを学生時代からよくやっていた中で、人間がモンスターに勝てるのは、剣術や魔法を使えるからで、魔物がそれをやったらすごく強いよね、というのは意識にありました。
――ベニマルやシオンは成長をどんどん続けていきます。彼らの成長は当初から構想にあったんですか?
伏瀬そこまでの構想はなかったです。ただ、初期のキャラが途中から置き去りにならないようにはしたかったです。主人公だけが強くなっていくのも変な話なので、一緒に成長していくキャラ設定にはなっています。
ソウエイ
――ベニマルやリムルと一緒に戦っているソウエイですが、ベニマルが表側の侍大将というポジションにつくのに対して、いわゆる忍者的なポジションです。そのわりにいわゆる汚れ仕事はあまりしていない印象があります。
伏瀬実は汚れ仕事もしているんです。ただそれを描写する必要がないというか。番外編ならともかく、あまり本編でやる必要ないと思っているんです。本編は基本的にリムル視点で描かれているから、リムルの目の前でそういう汚れ仕事を見せる時点で、ソウエイが無能だよっていう話になっちゃうので、影でバレないように処理する感じですね。そこが一切リムルに伝わっていないという部分で、有能に見せている感じです。
ミョルマイル
――ミョルマイルは人間として重職についているキャラですが、いわゆる外交、金儲け、悪の組織など、ちょっと俗っぽいことをやるキャラです。魔物の国の中で人間の彼にこういう働きをさせたのはなぜでしょうか?
伏瀬これは単純に適材適所ですね。基本的に、超越者たちはお金とかはどうとでも調達できるから、要らないんです。お金に価値を見出せない人たちに、お金を稼げと言われても、「それ、必要ですか?」ってなっちゃう。
――逆にリムルやミョルマイルは、外貨を回していくことの重要さをわかってる。
伏瀬そう、金は大事だって彼らはわかっている。そもそも国を狙われないようにするために、自分の国は有益ですよと主張しないといけないわけです。うちの国に攻めてきたら経済が止まるよ、となれば相手も戦争がしにくくなる。そういう安全保障面での有用性を証明するためにもお金の関わりは大事だし、本当に強いだけだったら恐れられて狙われることもわかっているんです。経済的なWIN-WINの関係を目指すのがリムルの理想なので、多少損したところで、「生き残れるなら別にいい!」くらいの感覚ですね。ミョルマイルがいなかったら、けっこう危ない国になっている気がします。
エルメシア
――エルメシアは、いわゆる長命の種族ですね。転スラには長命種や不死の者が多々登場しますが、あまり達観していないキャラが多い印象です。彼らは非常に人間味にあふれていますが、そのあたりは狙って作られているんですか?
伏瀬長命だからといって、崇高なキャラクターを出してもいまいち面白くないというか、欲がないキャラで話が成立するかな、と思っています。1000年以上、何の目的もないまま何かを守るためだけに生きることはないんじゃないかな、と。たまに長命種の中でも「俺は自分の力を試したい」とか言って、覇王になるやつがいて、それがギィとかに潰されるのがこの世界。長命種の中でもお金儲けに特化していったのがエルメシアですね、やりすぎて潰されない程度にはしていますが(笑)。
ギィは勝つためには基本、何でもやる。
一切の躊躇がないから、7人の中で一番の強者
ギィ
――原初7柱についてお話を伺います。ギィは世界のバランサー的な役割を担っています。そういう宿命みたいなものを背負って生まれたキャラクターなんでしょうか?
伏瀬原初の7人は全員、自由意志のもとに生まれているので、好きに生きればよかったんですよ。世界に関与してもしなくてもよかったんです。立場や目的が出来るまでに期間があったと思いますし、その中で力の強弱が生まれてきた、という感じですね。ギィの強さに関してわかりやすく言うと、喧嘩したときに「人の顔面を本気で殴れるか殴れないか」という部分なんです。相手の痛みとかを考えていたら、それを考えない人には勝てない。ギィは勝つためには基本、何でもやる。一切の躊躇がないから、7人の中で一番の強者であるんです。精神的に強い。そこからある程度の責任感を覚えたのが、今のギィですね。
ディアブロ
――原初七柱のディアブロですが、彼だけじゃなくスーパーカーの名前がついているキャラがいます。
伏瀬そうですね。これはもう、名前を考えるのが面倒くさくなったからです(笑)。
――(笑)ディアブロは女性人気も高い印象があります。
伏瀬ディアブロはある程度狙ったところはありますね。WEB版(の「転生したらスライムだった件」)よりも、ちょっとかわいい系になったと思っています。とはいえ、基本的にディアブロは有能なので、シオンと違って「ここで騒いでもろくなことにならない」とか見抜くところもあるんですよ(笑)。
テスタロッサ
――テスタロッサは原初の白というキャラクターですが、「テスタロッサ」という言葉には赤のイメージが強いです。この差は意図的なんですか?
伏瀬伏瀬:WEB版では赤髪だったんです。でも「赤髪のキャラが多すぎ問題」で色を変えていこう、となって、書籍化にあたってキャラ設定を変えた時に、テスタロッサは白になりました。でも、名前とマッチさせるために赤い瞳に変えています。
――テスタロッサは、ディアブロに勧誘される形でリムルの配下になっていますが、彼女とディアブロの関係性はどういうものなんでしょうか。
伏瀬最初に生まれてるのがギィで、2番目がテスタロッサ、3番目がディアブロくらいの順番だから、ディアブロからしたら、テスタロッサには若干苦手意識があるんです。そしてテスタロッサは非情なようで、意外と優しいところもあるので、妹たち2人とは戯れている程度のイメージですね。テスタロッサも、元から強いんですよ、あとは心の持ちようの問題なんです。負けなければよし、というのがテスタロッサの基本的な考え方で、ディアブロ相手なら負けないけど、ギィ相手だと厳しいのかな……でも、引き分けに持ち込めるんだったら、それでいいという考え方をするんです。まず「直接戦わなければいいじゃん?」という話で、「勝てない相手に正面から戦い挑むってバカだよね!」というようなことを、テスタロッサも思っているんです。
カレラ
――カレラは剣術を使いますが、剣術を使わせようと思ったきっかけをお聞きしたいです。
伏瀬基本的に剣術を使う必要がないキャラクターだったんですけど、剣を使うのが上手いやつを見て、それが意外と面白かったので、自分もやってみようとなった。ただの趣味なんですね。エスプリと二人で習っていて、どっちが上手くなるか競争したりしてますね。目的のために何かをするというわけではなく、でも負けず嫌いなので張り合って稽古してる。一番大変なのは、師匠のアゲーラですね(笑)。
ウルティマ
――(笑)ウルティマもスーパーカーの名前ですが、イタリア語で「究極」という意味です。
伏瀬彼女にウルティマとつけたのは、単純にカッコよさからですね。この子意外とかわいいよねって思ったので、そういう名前にしました。
――ウルティマはかわいいけれど残虐な部分もあるキャラです。そのギャップは狙われたんでしょうか。
伏瀬ちょっと狙ってました。リムルの前ではずっとかわいい系を演じてるけど、いないところではああなるんだ、というのを、劇場版で出せてよかったですね。いつか描きたかったので……まあ、迷惑極まりないやつですが(笑)。
ミザリー
――ミザリーとレインは原初の緑と青です。ギィが受肉させたとはいえ、悪魔が悪魔を召喚するのは面白いと思いました。
伏瀬ミザリーとレインはタッグを組んでギィに負けてるので、ギィに対して眷属化してるんです。だから、呼ばれてすぐ応じた形ですね。従っているのは、明確に負けたからです。頑張れば逆らえるんですけれども、今のところ頑張る必要はないかなっていう。ちなみにレインは番外編とかその他諸々で、キャラが確立していってますね。
レイン
――書き進めていく中で、キャラクターが勝手に動いていく感覚もあるんでしょうか。
伏瀬多いです。11巻でレインとディアブロが戦った時は、そこまでキャラが確立してなかったから、今書くとたぶん変わった感じになると思いますね。
ヴェルドラは、人間で言うと中学生くらい。
やっと今、育ち始めてきたところ
ヴェルザード
――竜種3体について伺っていきます。ヴェルザードは氷を司る竜ですが、性格も氷という属性に合わせて考えられたんですか?
伏瀬そうですね、ヴェルグリンドの方が苛烈な性格をしているように見えますが、実際ヴェルグリンドの方が優しいことは、ヴェルドラの扱い方の違いでわかるようになっています。ヴェルグリンドはヴェルドラに対してバチバチと叩いて強制させようとしますが、ヴェルザードの場合はそんなことせずに殺しちゃう。蘇ればどうせ人格は変わるだろう、と、いい人格が出るまでガチャを回す感じです。成長に期待するという感情がほぼ欠落しているイメージですね。
ヴェルグリンド
――転じてヴェルグリンドは「炎」なので……。
伏瀬しつけたいというか、悪いことをしたら怒るのがヴェルグリンドですね。冷たさと温かさを、そういう部分で表現しています。
――ヴェルグリンドには空間移動能力があります。並列空間にも移動できますが、その力で他の世界に影響を与えたりすることはあるんですか?
伏瀬厳密に言えばあります。でも一応制御はしてるので、影響を出さないようにしていると思います。それこそヴェルザードだったら、そんなの気にしないでしょうね。相手の世界が壊れようが関係なしと思う可能性が高い。このふたりの間には、気配りができる人とできない人の明確な違いがありますね。
ヴェルドラ
――ヴェルドラは、人間の年齢に置き換えるといくつくらいなんでしょうか?
伏瀬中学生くらいじゃないですかね。子どもの頃のやらかし具合で何度も矯正されて、リセットされて……やっと今、育ち始めてきたところで、ちょうど勇者に負けて封印されたから、そこでちょっと成長した面があります。
――リムルの中にいた時間も含めて、無限牢獄の中にいた時間は彼の成長を促したんでしょうか。
伏瀬暴れるだけの毎日から、考える時間を置けたのがよかったのかなって思います。彼は相手が「弱い」ということがわからないんです。まずリムルたちがちまちま家を建てるのが理解できなかった。「この建物、自分が潰すために作ってくれてるのかな?」くらいの感覚だったのが、それもちゃんと意味があって作っていたんだって理解してきたんですね。「ヴェルドラのスライム観察日記」(「転生したらスライムだった件」コミックス1~6巻の巻末に収録)を読んでいただけると、そのあたりをわかってもらえるかと思います。
――ヴェルドラのビジュアルモチーフは「BASTARD‼-暗黒の破壊神-」のダークシュナイダーだそうですね。キャラクターをイメージされる際に、今まで読んできたコミックや作品に影響されることはあるんでしょうか?
伏瀬編集さんと話している中でよく出てくるのは「聖闘士星矢」と「(疾風伝説)特攻の拓」ですね。主にキャラクターについてですが、「冥王・ハーデス」や「天羽時貞」はよく名前を出しています(笑)。あと、転スラに出てくる技の描写に関して「この技、何が起きてるんですか?」と編集さんに言われると、「聖闘士星矢をイメージしてください! 拳を上げて銀河が出てきたら、すごいことが起こる。そういうことです!」って(笑)。「聖闘士星矢」は大好きですね。
意味がないことをするキャラがあまり出てこないのが「転スラ」
――最後に主人公・リムルについてお聞きします。転生前のリムルは、30代のゼネコン社員でした。街づくりには、彼のゼネコンで培った経験や知識が活かされてると思うんですが、首都リムルはヨーロッパ的な街づくりです。温泉や和室はあるものの、あの計画性を持った街づくりは、彼が転生前にやりたかったことなのかな、と。
伏瀬ゼネコン関係の中で現場に行ったことのある人には共感してもらえるかもしれないですけど、なんでもゼロから作れたら楽なんだけどな、という理想があると思うんです。区画割りしてゼロから都市計画して、本当に理想的な都市を作ってみたい欲求、というか。そういう意味で、首都リムルは彼の夢を詰め込んだ国なんです。
リムル
――ギィやヴェルドラのような不死の存在と、生まれて死んでいく人間たちが同居する「転スラ」の世界において、新陳代謝はどこまで描かれるんでしょうか?
伏瀬伏瀬:人間や普通の魔物は生まれて死んで、子どもに引き継がれていきますが、寿命と無縁になった者たちはずっと存在している感じになります。世代は、物語が終わった後にたぶん切り替わっていくでしょうね。でも、本編最終回までその話を描くことはないです。
――「転スラ」は、リムルの「転生したからゆったり暮らしたい」という軸がまったくぶれていないところが本当に素敵だな、と思います。
伏瀬変に義務感とかの話になると、押し付けっぽくなるんです。よいと思ったら一緒に行けばいいし、もう駄目、と思ったら離れればいい。「自分はいいと思う国を作るから、世界のことは知らん!」がリムルの基本的な考え方。自分の考えを押しつけず、相手の考えも否定はしない前提があるんです。
――リムルが転生者で、思想が現代人的なところが面白いですよね。
伏瀬そうそう、イヤなら出て行けばいいじゃん、別に強制はしてないんだから、という感じですね。「転スラ」の世界は、基本的にリムルのいないところではけっこうヤバい場所です。彼がいるからハッピーに見えるだけで、いないところではたぶんとんでもなく大変なんですよ。だからヒナタとかは絶対騙されないんだって、強い意志で魔物を殺すようにしてたんです。でもリムルが見たら、ちょっと過激に見えちゃうんですよね。
――リムルを中心に描かれている物語だからこそ、激しい戦いがあっても温かく見えるけど、その外側の世界は厳しいという温度差。改めて、「転スラ」はリムルの物語なんだな、と思います。
伏瀬そうですね。ギィなんかはひとりで世界を滅ぼせるけど、しないんですよ。なぜなら、それに意味がないから。意味がないことをするキャラがあまり出てこないのが「転スラ」だと思っています。
※本キャンペーンは終了しました。
たくさんのご応募ありがとうございました。
▼ キャンペーン詳細 ▼
©2023 Fuse ©MICRO MAGAZINE 2023 Printed in Japan
©伏瀬・みっつばー/マイクロマガジン社
©伏瀬・川上泰樹/講談社
©川上泰樹・伏瀬・講談社/転スラ製作委員会