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特集 Aimer×「天久鷹央の推理カルテ」 インタビュー

特集 Liyuu×「歴史に残る悪女になるぞ」 インタビュー

配信中の注目アニメや原作ノベル・コミックについて、アニメの世界で活躍中の方に語っていただくdアニメストアのインタビュー企画。4回目に登場してもらったのは、TVアニメ「天久鷹央の推理カルテ」のオープニングテーマ「SCOPE」を担当するAimerさんです。自身が手掛けた歌詞で、作品の主人公である天才医師・天久鷹央の内面に迫ったAimerさんに、アニメの見どころや原作の魅力を語ってもらいました。

INTERVIEW

天久鷹央の魅力は、孤独を内包していることだと作品を読んで思った

――最新シングルの「SCOPE」について、Aimerさん自身はどんな手応えを感じていますか。

Aimer:アニメのオープニングテーマを担当させていただくこと自体、自分の中では多くなくて、担当させていただくときも不穏な感じが強かったりします(笑)。わかりやすく華々しいというか、サウンドとしても曲全体としても、「オープニングを飾る」という言葉がふさわしい曲ができたのは、ひとつの手応えがあります。

――受け取る側としても、Aimerさんの曲としては意外性を感じる楽曲かもしれないですね。

Aimer:そうですね、できあがったときに、珍しいサウンドの構成かな、と自分でも思いました。

――楽曲制作にあたって、作品側からはどんなオーダーがあったんでしょうか。

Aimer:リクエストしていただいたのは、今回はミステリーもので、タイトルに「天久鷹央の」と主人公の名前が入っていて、主人公が作品の象徴として際立っているので、オープニングはシンプルに――物語の中の人間関係の機微やドラマ性を表現するというよりも、「彼女のテーマソングになるような楽曲を」というリクエストがありました。

――天久鷹央は医師であり、推理をする探偵的な側面を持つ人物ですが、探偵をモチーフに歌詞を作るのも珍しい経験ではないかと思います。どのような面白さや難しさがありましたか?

Aimer:立ち位置がお医者さんでもあり、職業は探偵じゃないですけど探偵をする立場にあるということで、その立場を考えると複雑性がありつつ、キャラクターとしてはかなり自分の中ではシンプルにとらえていました。原作を読ませていただいて、強烈なキャラクター性があるな、と思ったんです。誰もかなわない、コンピューターのような頭脳を持っていて、抜きんでた能力があって、だけど人間関係や人の心の機微にはからっきし、という天才ゆえの孤独を抱えている。そこに、いわゆるワトソンのような存在の小鳥遊さんがいることで、彼女は自分の能力を120%発揮できる。そういう、諸刃の刃のようなところを抱えているキャラクターだと思います。彼女を見ているとどこか惹かれるところがあるし、憧れますし。常識にとらわれない、真実を知りたいっていう気持ちはわたし自身も持っているので、そこに焦点を当てて歌詞を作っていきました。

――作品全体から受け取ったもの、という意味ではどうですか?

Aimer:読んでいて、シンプルに面白かったです。わたし自身はあまりミステリー小説を読まないんですけど、トリックの内容の専門性が高くて詳しくわからなかったとしても、医療の見地に立って鷹央がいろいろな難事件を解決していくのは爽快感があるし、何も医療の知識がなくてわからないからこそ、鷹央の推理にただ拍手して(笑)、「すごい!」と楽しめる作品だなと感じました。彼女が人間関係においてうまく立ち回れないからこそ、何かを解決したり紐解いていったりすることが、彼女自身にとっての救いになっているところは、見ていて応援したくなります。それでいて、シナリオも全部読ませていただいたんですけど、上手く立ち回れないからこその孤独が描かれていることによって、より魅力を感じましたし、いち読者として面白く読ませてもらいました。

――天久鷹央という人物は、表面的には天衣無縫というか、何にもとらわれない人物という印象がありますが、OP曲で孤独にフォーカスする意図があった、ということですね。

Aimer:そうですね。彼女の魅力は孤独を内包していることだと作品を読んで思ったので、一辺倒な強さだけではなくて、陰を持っているところは、主題歌として表現してあげたいな、と思いました。曲調としても、爽快感や華々しさがあると言っても、そんなに明るい曲ではないですし、そこでも影を描いてあげたほうがよいな、と思っていいました。

――とはいえAimerさんの楽曲としてはかなり爽快感があるほうだと思いますし、一方で不穏さは控えめですよね(笑)。

Aimer:そうですね、普段の自分の曲に比べたら、そこは抑えて作っています(笑)。不穏さを感じさせる曲が得意……と言ったらあれですけど(笑)、でも得意だと思っているところはあるかもしれないです。自分の声や歌いたいものとの親和性が生まれているのは、陰が多い部分かな、と思います。

――ちなみに「不穏さがある楽曲が得意」なのはなぜでしょう?それって、自分らしさでもあると思うんですけど。

Aimer:音楽に対して自分が求めているものは、リスナーとして聴いていたときから、自分がちょっと欠けている部分というか――鷹央でいうところの、落ち込んで丸くなっているとき、自分もそういうときに音楽を聴いて救われてきました。あまりこう、調子がいいときに、それを盛り上げるときに音楽を聴くというよりは、自分の陰の部分と寄り添ってくれる音楽を聴いていたし、そういう表現をしたい、歌いたいと思っていたからだと思います。

日頃、まわりのことがぱっと解決するって、なかなかない。
鷹央は白黒をはっきりつけて解決してくれるので、観ていて元気をもらえる作品だと思います

――Aimerさんは以前、「歌と闘っている、闘いながら歌っている」というお話をされていたことがあって――。

Aimer:ああ……でも、その言葉は今でもそうですね。自分の過去の言葉でも、腑に落ちるところがあります。

――Aimerさんはひとりのシンガーとして活動されている、ひとりで闘っているわけで、「SCOPE」の歌詞を読むと、天久鷹央にご自身との近さを感じたのではないかな、と思います。

Aimer:そうですね。一見、全然違うんですけど――彼女のような物おじしない強さがあるかといったらそうではないですし、他人を全員「お前」と言っちゃうような強さもないですけど、歌を歌ってひとりでステージに立って、これからも歌い続けていくこととか、音楽を続けていく上で、やっぱりどこかで鷹央のような常識にとらわれない部分を持ちたいし、自分と彼女がちょっと重なっている部分もあると思います。自分の背中も押せるような曲にしたいな、と思っていました。

――「あがいていたり、もがいていたりする人の物語にすごく惹かれる」という話も以前にされていましたが、今もそうですか。

Aimer:変わらないです。それで言うと、鷹央さんもそうかもしれないですね。普段は強いですけど、自分の弱さを彼女もわかっているし、そういう部分がないと読者も彼女についていけないかもしれないと思うので、物語がそこをちゃんと内包しているな、と感じます。

――アニメの放送に向けて、楽しみにしているポイントは何ですか?

Aimer:シナリオを読ませていただいて、全部知っちゃっているから、「そういうことだったのか!」という推理の部分をアニメーションで初めて見て楽しめないのが、ちょっと残念ではあります(笑)。アニメーションになったときに、天久鷹央が推理して解決するシーン、真犯人が明らかになるシーンの爽快感も楽しみですし、鷹央と小鳥さんのちょっとしたかけあい、軽口のたたき合いも好きなので、そのテンポ感がアニメーションでどう再現されるのかも楽しみにしています。

――主題歌を担当するアーティストとして、まだ読んだことがない方に「天久鷹央の推理カルテ」という作品をアピールするとしたら、どんな言葉になりますか。

Aimer:仕事や学校から疲れて帰ってきて、「そろそろ寝ようかな」という時間にアニメを観ていただくとして――日頃、まわりのことがぱっと解決するって、なかなかないじゃないですか。もやもやしたままで過ごすことのほうが多いから、それに疲れちゃっているようなときに、鷹央は白黒をはっきりつけて解決してくれるので、観ていて元気をもらえる作品だと思います。解決していく過程も、医療ミステリーの独特な面白さがありますし、「自分も頑張ろう」と思える、勇気づけられるような力がある作品だと思うので、オープニングでもそれを手助けできていたらいいな、と思います。自分としても新しいというか、これほどわかりやすくオープニングの役目を担っている作品は珍しいと思っていて。始まったときにギターのリフやブラスの感じとか、サウンド全体で作品を華々しく盛り上げたい気持ちで作った曲なので、「天久鷹央」の魅力を引き立たせられたら、と思っています。

――dアニメストアで「天久鷹央の推理カルテ」のアニメを観る方、電子書籍を読んでくれる方に、メッセージをお願いします。

Aimer:オープニングテーマとして、主人公の鷹央のテーマソングになれるような主題歌を制作したので、この楽曲を聴いてくださったら嬉しいですし、アニメを観たときにより気持ちが高まって、オープニングから物語に引き込まれていくと思うので、ぜひ観ていただきたいです。

――「SCOPE」はAimerさんにとって25枚目のシングルで、音楽活動も2025年で15年目になるそうですが、ここまで歌を歌い続けてこられた原動力って何だと思いますか?

Aimer:ひとつは、意図せず今回の作品と重なりますけど、好奇心はすごく大きいと思います。自分の中で、まだまだ完成していない、どこまで行っても完成しないものがあって、歌とか表現においてもある意味ずっとたどりつけないところがあるから、それをどこまでも見に行きたいというか、探したい、たどり着きたい、という好奇心があります。

――「SCOPE」は2025年最初のリリースになるわけですが、今年シンガーとしてどのように歩んでいきたいと考えていますか。

Aimer:「自分の本当の気持ち」みたいなものを、もっと解き放っていきたいですね。もちろん、ずっと本当のことしかやっていないけど、もうひとつ皮をむきたい、脱皮したいというか、次の形態に羽化したい、そういう気持ちがあります。怖いからずっと行かなかったところに行きたい、という感じです。そうやってずっとはがしていかないと、続けていけないなって思っています。

私の推しマンガ
~Aimer~

Aimerさんに影響を与えた&最近気になる推しマンガは?

Aimer:読んだマンガは全部自分の創作につながっています。アングラな気配を感じさせながらも、すごくポップな表現に昇華している。陰鬱なものを持っているけど、ちゃんとポップになっている。それがスタイルとしてカッコいい、と思いますし、「カッコよさ」と「みんなに好かれる部分」が共存している作品に惹かれます。林田球さんが描かれる世界は鬱屈としていながら、でもチャーミングで、そのバランスが絶対に真似できないものになっているので、「ドロヘドロ」「大ダーク」は自分の中で理想的な作品です。吾妻ひでおさんの「失踪日記」(書影は続編の「失踪日記2 アル中病棟」)は好きすぎて、電子で読んだ後に紙の本も買いました。内容は壮絶ですが、吾妻さんの絵柄のおかげですんなり読めて、「逃げたくなってしまう気持ち」に迫れるのが面白いと思います。

「天久鷹央の推理カルテ」を観る&読む!

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Liyuu
Aimer

2011年にシングル「六等星の夜」でメジャーデビュー。
2022年にリリースしたTVアニメ「鬼滅の刃」遊郭編オープニングテーマ・エンディングテーマ「残響散歌/朝が来る」では各種ランキングで1位を獲得し、同年末にはNHK紅白歌合戦にも出場。現在、 全国10都市19公演のホールツアー「Aimer Hall Tour 2024-25 "lune blanche”」を開催している。
https://www.aimer-web.jp/

© 知念実希人・いとうのいぢ/ストレートエッジ・天久鷹央の推理カルテ製作委員会

更新日:2025年1月31日